最近その言葉を聴くことが増えてきた「SDGs(エスディージーズ)」。でも「SDGsって何?」「よく知らない〜」という人も多いはず。そこで、SDGsがママ起業家とどう関係あるかズバリお答えします。他の解説にはなかなかない、ママ起業家のためのSDGsのポイントを、できるだけ分かりやすく噛み砕いてお伝えします。少々長くなりますが、我慢してお付き合いください。
まずは基本から。SDGsとは何か。どういう背景で出てきたのか?
まず、『SDGs』とは、「Sustainable Development Goals」の略です。2015年に国連が定めた17の分野の『ゴール』=『目標』のことで、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されます。
17の目標は、カラフルなパネル状のアイコンにマーク化されています。見たことあるでしょ?
(え、ない?では、改めて見てみてください)
ぱっと見、JICA:国際協力機構やユニセフ:国連児童基金の海外協力のポスターとかが浮かびますよね。
つまり、『SDGs』って「国際協力」とか「環境問題」のことね〜というのが、多くの人が持つイメージでしょう。「言われれば否定できない話」だけど、「積極的に興味がわくか?というと、ちょっと…」という感じ。「社会貢献?ちょっとワタシとは次元が違う話〜」というイメージです。
なのにですよ、そんな『SDGs』に、国も地方自治体も民間企業も、いま実は“騒然”と沸き立っています。
なぜ今、SDGsが企業や国や自治体の間でこんなに注目されているのか?
不思議だと思いませんか? 貧困や人権、環境などの問題は以前からあるのに、企業や自治体がどうして急にこんなにワーッとなっているのか?
答えは、「SDGsは競争力強化のカギ」という認識が競争好きな人たちの間で広がっているから。
「積極的な社会貢献で、未来に勝ち残る!」とトップが号令をかけているんですね。
逆に言うと、SDGsに遅れた企業や自治体は未来に勝ち残れない、ということ?
それは、「イエスであり、ノーである」・・・です。
順を追って説明します。
そもそも、SDGsで解決すべき17のゴールのような問題はなぜ起こったのでしょう?
結論だけいうと、19世紀〜20世紀に、いま先進国といわれる国々が産業革命〜大量生産と消費〜資源の奪い合い〜紛争・戦争などを繰り返し経済成長を遂げたことに問題の原因があります。その勢いは第二次大戦後もグローバル経済化でますます強くなっている。
一方でこのままでは地球環境が持たないという問題に先進国の研究者が気が付きました。また、宗教的衝突に経済格差が火に油を注ぎ「テロ」が頻発し、これ以上の貧富格差が広がることは、人道上も社会秩序上も限界であることが露呈しました。
そこで、国連が音頭を取って制定した17の目標がSDGsです。
でも、ここまでの話では従来の「国際貢献」の話で、まだあなたにとって身近な話ではありませんよね?
ハイ、もう少しのガマンです。
国連がSDGs推進のために味方につけたのは・・・えー!機関投資家!?
そこで国連が賢かったのは、今回SDGsを世界企業や各国政府が真剣に推進するように、彼らがもっとも困る相手を味方に付けたんです。誰か?
それは巨大な資金を動かす機関投資家です。なんと「SDGsをしっかり推進していない企業には投資しない」という取決めに機関投資家にサインさせたのです。
巨大資金が必要な世界企業、大企業にとっては大きな衝撃です。株主総会のたびにSDGsのどの分野にどう貢献しているかトップが報告しないと資金が集まらないわけですから。
しかし、これも不思議と思いませんか? より儲かればいいはずの投資家が企業の勢いを削ぎかねない社会貢献を投資判断とするだなんて…。人道的な投資家もいるだろうけど全体からするとごく少数派では?と思いますよね。
ところがそれは、「長期視点」に立ってみると合理的判断だったんです。
一言でいえば『本当の巨大資産家はゲームがいつまでも続くことが一番の望みだから』なんですね。
彼らにとって世界経済は、例えば「ワールドカップ」や「甲子園」のようなもの。各チームやプレイヤーが切磋琢磨して「ワールドカップ」がもっと面白く発展すればいいわけで、決して“一人勝ちし続けるチーム”が登場することは望みません。だから、フェアプレイの土壌を作る取決めにサインしたのです。
「ふーん・・・」
もう飽きてきましたよね・・・。だって、巨大投資家なんて私たちには関係ないし。
そうです!この枠組みで必死になるのは、機関投資家からの投資を必要とする大企業だけです。ママ起業家はもちろん、中小企業や地方自治体も基本的に関係ない。それなのに、いまSDGsに中小企業も地方自治体も必死に取組もうとしているのはなぜでしょうか?
巨大投資は関係ない中小企業や行政までSDGsに必死になる理由は、
イノベーションが生む巨大市場獲得と、社会変化リスクへの遅れの回避
「理想の世界」は達成せねば世界が共倒れ。だったらつべこべいわず何とか実現しよう!と機関投資家も政治家も事業家も「ゲームが続くこと」に向かうと決めたところで、「あっ」と気づいた!
『あれ? この実現にはたくさんの社会変革(=イノベーション)が絶対に必要・・・だとするとここ10年くらいで世界を変えるための巨大な「市場」があるということか〜!?』『これは儲かる!』『乗り遅れたら大変だ!』ということに。
- 変化はチャンスだ!
- SDGsの目標実現に必要な“巨大市場”を獲得するために、他社に絶対に負けるな!
- この波に乗って、2030年の“新しい秩序の世界”で少しでも優位な位置に立とう
- このSDGsの波に乗り遅れるということは、淘汰されて生き残れないということ!
そこで、大手も中小もベンチャーも、中央政府も地方自治体も必死になっているわけです。
「積極的な社会貢献で、未来に勝ち残れ」というトップ号令はそういうことなのですね。
ここまでが、2019年現在、SDGsがわーっと沸き立っている状況の説明です。
かなり分かりやすいセミナーでも、ここまでですね・・・
ここからがいよいよ、ママ大オリジナルのビジョンの展開です。
(え!今まで前置き〜!? ハイ、SDGsは複雑なので)
しかし、違和感が・・・。
無茶な成長競争が起こした問題を、社会貢献の競争が解決するでしょうか?
SDGsブームの理由、なんとなく分かったけど・・・でも、なんだか違和感を感じませんか?
そもそも問題の原因は無茶な経済成長競争をしたことですから、「攻めの社会貢献」でまた競争して、さらに巨大企業の力が増すのはどうなのか。それで世界は本当に幸福になるのでしょうか?
そう。ここでようやく「女性の感覚」「地域に生きる人の感覚」がとても重要という話になります。
話が変わるようですが、ここで「法人」という存在のことを考えてみましょう。
「法人って、株式会社とか社団法人とかのこと?」
そうです、その法人。「法人」というくらいで、“法的に人格を認められた存在”なのが法人です。
法人に対して個人のことは法律用語では「自然人」といいます。分かりやすいイメージですね。
なんで急に「法人」の話かというと、世の中のプレイヤーとして、この「法人」が19世紀〜20世紀にかけて急成長し、「自然人」以上に大きな力を持ったからです。
で、この法人と自然人、それぞれに権利と義務を行使できる「人格」があるわけですが、では法人と自然人の最も違うところはどこか? それは・・・法人には神経も感情も無いこと
誤解を恐れずいえば、法人という存在は(中で働く人や経営者個人の感情とは別ですよ!)痛みも感じないし、情に流されたりもしないのです。
日本の大企業や行政官庁の皆さんがすべて感情抜きに合理性だけで判断しているとは申しませんし、熱い情熱の担当者が組織を動かすこともあります。日本人は特にそういう池井戸潤のドラマのようなスピリットが大好きです。しかし、現実のグローバル経済の競争下ではそうも言えない状況で、この20年ほどで日本もずいぶん意識変化し、西洋的ロジカルシンキングでビジネスを進めるようになりました。
法人という人格は基本的には、ひたすら合理的に「利潤の確保と事業の継続」とを求めていくもの。そのための必要な策として“人に優しい、自然に優しい◎◎社”などのイメージを纏うことはありますが、それは「利潤の確保と事業の継続」という目的のための手段にすぎない…というのが基本です。
一方で、個人は神経と感情で生きています。叩かれれば痛いし、感情を揺さぶられて笑いも泣きもします。経済(=お金)は生活に必要不可欠なものではありますが、それは本来は「幸福」という目的のための手段にすぎません。
法人(企業や国など)と自然人(ひと)との行動原理の違いを意識しないと、
本当に「人」が幸せになるSDGsのゴールは達成できない
SDGsの考え方には、「ESG」という3つの重要な要素があります。また3文字英語が出た!と嫌がらず、その中身を考えてみましょう。
Eは環境(Environment)、Sは社会(Social)、Gはガバナンス(Governance)つまりルールを守る、ということです。この3つを良くするように活動する、というのがSDGs時代の「法人」経営者に求められることなのですが、それぞれ一つずつ考えてみましょう。
Governance
Gのガバナンスは、実はもっとも法人が取り組みやすい分野です。「ルール」があり、それを守るというのは非常に合理的な行動ですから。
Environment
次にEの環境は、「良い環境」の定義さえできればこれも取り組みやすい。
よく考えると、地球や宇宙にとって良い環境も悪い環境もありません。つまり良い環境とは「人間にとって」です。人間が生活しやすく、癒やされ、役に立ち、いつまでも続く・・・のが人が求める良い環境。そう考えると環境も実はまあまあ目標がはっきりしているといえます。
Social
もっとも法人にとってやっかいなのは、実はSの社会ではないでしょうか?
社会は個人の感情と神経の集積です。なかなか合理的には行きません。これを「合理的に解決」しようとすること自体が、誰かの神経を逆なでし感情を高ぶらせる・・・ということが繰り返されていますよね?
SDGs:2030年の“新しい秩序の世界”は、大きな力を持つ組織が本気で競争し、たぶんその多くは実現することでしょう。近い将来に世界には、飢餓に苦しむ人や学校に行けない子どもはほぼいなくなり、安全で清潔な水やトイレがより普及する一方、地球環境への影響は今よりも少なく、海も山もきれいなって温暖化も進行していないという状況になっているはずです。
一方で、個人の生きがいや地域と絡む「社会」の課題は、先に書いたとおり、感情抜きの合理性では解決しづらい。そこで、我々女性の発想や地域に生きる人の出番なのです。
「社会」の課題を解決できるのは、女性や地域に生きる人の発想ではないか
SDGsの世界を実現する鍵の一つは「多様性」です。
多様性とは、強いものも弱いものも、明るいものも暗いものも、速いものも遅いものも・・・みんな違ってみんないい、ということ。それこそが「文化」です。
これは生態系の生物だけでなく、「街」についても「商品」「サービス」についても同じ。
「商品」といっても大きな工場で効率よく生産されるプロダクトではなく、地域の人がその地域で作り出す言い換えれば「文化」と呼べるような「商品」や「サービス」をいかに残していけるか。
地域文化というと、伝統文化のことかと思いがちですが、伝統文化はもちろんのこと、もっと普通の「お店」や「教室」だって同じように地域文化だと思うのです、オリジナリティに溢れてさえいれば。
「え〜、普通の店や教室が地域文化だったら、あのカフェも、あの居酒屋も、あのパン屋も帽子屋も洋服屋も、あの絵画教室や音楽教室もみんな地域文化だっていうの?」
イエス!そうです。それこそが地域文化。
逆に、全国ブランドの支店や大手ブランドのフランチャイズチェーン店ばかりになった街を想像してみてください。魅力的ですか?
イキイキと輝いている街には、その街独特の飲食店がありショップがあり、何かを教えている教室があり、小さな何かを作る製造所(自宅の一角かもしれません)があって、そこにとても個性的な人たちがイキイキと働いているはずです。
できればそんな個性的な人たちが近所に暮らしているともっといい。みんなその街やそこに暮らす人が大好きで、仕事だけでなく、近所付き合いも遊びもお祭りも、そして子育ても、みんなまとめてかけがえのない日々を楽しんでいる・・・そんな世界です。
これって、あなたが実現したいことと重なってきませんか?
SDGsの中でも、以下の項目はとくに、ゴールのベクトルは一つではなく「多様」であると考えることから、私たちのSDGsがスタートします。
- 3 すべての人の福祉(=幸せ)
- 4 "質"の高い教育
- 5 ジェンダー平等
- 8 働きがい
- 11 まちづくり
どれもベクトルは一つではありません。
「男性脳」と「女性脳」とは、好き嫌いに対する意識や、身近で具体的なものに対する意識がまったく違うといいます。
ジェンダー平等とは、女性が男性並みに合理的で強い存在になることではないはずです。
世界を動かす巨大企業の経営陣や、先進国の政治リーダーに女性がたくさん出てくるのは良いことだとは思いますが、それが目指すゴールだというのは「男性脳」が考えたイメージのように感じます。
それよりも、経済合理性だけでない基準で、好き嫌いや身近で具体的な要素で経営判断をする小さな法人やローカル事業家がたくさん出てきて、ひとつひとつは小さいながらも全体としては無視できないほどの大きな役割を担っている・・・という状況こそが、SDGs=「幸せな未来」として目指すべき姿ではないでしょうか。
- ママ起業家として自立できるスキルを身につけ、大好きな仕事を自分の街を拠点に、お客様に愛されながらイキイキ続けられること
- 子どもの成長に合わせ働く時間をコントロールでき、職場環境と育児環境を一緒にしたりできること
- 自分の小さなビジネスが好きな街の経済と賑わいにほんの僅かでも貢献できる誇りと自信
- そして、自ら稼いだお金を、未来と地域に少しでも役立つ使い方を意識すること
あなたの未来は、
SDGs=「幸せな未来」のゴールなんです
そのために必要なのは、
ひとつは、より良いママ起業家や地域ベースで大好きな仕事をする良きローカル事業家を一人でも多く生み出していくこと。もう一つは、そういう人たちが生み出す商品やサービスを、消費者として積極的に支持していくこと。私たちは、そう考えています。
私たちのエシカル消費、
「未来エシカル消費」と「地域エシカル消費」を普及したい
最後に、SDGsの項目の一つである次の項目について触れて終えたいと思います。
- 12 つくる責任つかう責任
これも、私達が行動できる大きな役割であると思います。
「エシカル消費」という言葉が広まり始めています。エシカルとは「倫理的」という意味で、カンタンな言葉に置き換えると「人として正しい」ということ。
激安のファストファッションをひどい労働環境で作っていたバングラディッシュで、縫製工場が入っていた古いビルが崩壊して大勢の人が亡くなったという事件があってからエシカル消費は広まりだしました。ファッションだけでなく、食品から日用品まで、安くて便利だけどどこかで誰かが無理をしている商品は選ばないようにしようという動きです。
しかし、人道的な意識や環境への意識というモチベーションで、値段の高い商品を選択する人はどれだけいるでしょうか? 人としてのあり方に訴える方法だけでは、「エシカル消費」を広げるのは難しい気がします。
ではどこからなら広がるか?
その一つは私たち「子を持つ母親」が「未来」を意識したときではないでしょうか? 自分のためにはしない選択、ましてどこかの国の誰かのためでは行動に移せないことも、我が子の未来のためになら少し頑張って良いものを選ぶという行動を取るのではないでしょうか。
それを仮に「未来エシカル消費」と呼びましょう。私たちママ起業家がほんの少し経済的な自立を手に入れられたなら、子どもたちが生きる未来のためにその選択は惜しまずするのではないでしょうか。
もう一つは、男性も含めて自分の好きなまちが大切と考える人達が「地域」を意識したときに取る行動ではないでしょうか? エシカル消費は何も途上国のためばかりではありません。今お金を払おうとしている食品、ファッション、雑貨・・・あらゆるものが、地域の経済にどれだけ貢献しているかを、毎回少し意識してチョイスすること。
それを仮に「地域エシカル消費」と呼びましょう。地域エシカル消費がムーブメントになれば、地域で独立ビジネスをしている小さな事業家をどれだけ助けることになるか。その動きはさらに良き地域の独立事業者を目指す人を生み、好循環へと入るのではないでしょうか。
日本ママ起業家大学のSDGsビジョン
長くなりましたが、これが私たち日本ママ起業家大学が考えるSDGsのビジョンです。
私たち、日本ママ起業家大学は、女性脳発想で身近な幸せを実現する良きママ起業家をたくさん育て、そういう親を見て育つ子供に多様性の大切さを伝え、本当の意味のジェンダー平等と働きがいと経済のバランスを実現し、自分たちが暮らす街をより元気にできる人材育成に努めます。
それと同時に、子どもたちの未来のための「未来エシカル消費」、地域の豊かさを支える「地域エシカル消費」の普及啓発に努め、豊かな未来と幸せな地域社会の実現のために尽くします。
2030年に世界が目指そうとしてるSDGsのゴールを、企業や行政の皆さまと共に、私たちは私たちなりの役割を担いつつ、より多様性をもった形で「理想の未来」を実現していきたいと願っています。
そこから逆算して、私たちが今後の行動を決めていくべき時期が、まさに今だと考えています。さぁ、一緒にやりませんか!?