歩んできた全てが、新たな人生につながっていった
2020年に還暦を迎えた佐藤令歩さんは、元々は武道系アスリート。
1992年の国体で「なぎなた競技」優勝経験を持ち、その後ボディメイクのパーソナルトレーナーとしても活動されてきました。
お茶は武家茶道 藪内流、華道は池坊を学んできた経験と併せ、ママ大プロデュースによる「和の所作ボディメイク」の独自メソッドを開発。
コロナ渦でスタートしたオンラインレッスンは、開始数か月で一部サービスの新規募集がストップするほどの人気を集めています。
54歳でママ大の門を叩いた令歩さん
54歳でママ大の門を叩いた令歩さん。
その決して平坦ではなかった道のりについて、日本ママ起業家大学学長の近藤洋子さん、そしてママ大のプロデューサーとして共に「和の所作」を創り上げてきたトミタプロデュース株式会社 代表取締役の富田剛史さん、インタビュアー佐々木はる菜の対談形式でお送りします!
前後編の【前編】ではまず「和の所作」について、そしてリアルを超えたオンラインレッスン誕生のきっかけについて、その魅力に迫っていきたいと思います!
単なるトレーニングではない「和の所作」とは?
「なぎなた日本一」明かしたのは、最後の授業!
佐々木はる菜(以下、佐)「「和の所作」で美しい動きとともに健康な身体を作る。動作を意識すれば、日常がトレーニングになる…「身体を動かす”術”を知る。」という言葉が印象的です。」
佐藤令歩(以下、令)「日本人の昔からの身のこなしや所作には、先人の知恵が詰まっています。体幹をきちんと意識し体をまっすぐ使う「和の所作」を身に着ければ、体に余計な負担がかからず、日常の所作全てを美しくすることができる。そうやって日々の動きを整えることができれば、トレーニングジムなどにわざわざ通うことなく体を鍛えることにも繋がり、歳を重ねても美と健康を保つことができるというのが基本的な考えです。」
近藤洋子(以下、洋)「私も体験しましたが、しゃがんだ体制から立ち上がる動作や正座などの日本人が昔から行なっていた日常動作って、きちんと体幹を意識してやってみると本当にきつくて筋肉痛が大変でした(笑)現在は月20日間稼働、1日3レッスンやる日もあり、令歩さん自身が一番体が引き締まってしまったとか…確かにママ大に来た6年前よりも更にスタイルアップしていますよね。ちなみに体脂肪率は…?」
令「15%くらいでしょうか」
佐 すごい!先日ママ大が主催する朝の番組配信にご出演された際も、還暦とは思えないスタイルが話題を集めていましたよね。令歩さんは長年「なぎなた競技」でご活躍され国体での優勝経験もお持ちですが、もともとそのご経歴を活かして何かビジネスをしたいと思われていたのでしょうか?
令「体は『食べ物』と『日常の動作』と『これまでやってきた運動』でできているというのが、ずっと変わらず私の軸となっている考えです。たとえジムでたくさん鍛えたとしても、それを日常の中でどう使うのかということが大切。わざわざ筋トレをしなくても、日常の動きがそのままトレーニングになるような動きを大切に考えており、ママ大に入った6年前はハイヒールウォーキングの講師をしていました。」
洋「令歩さんは最初あまり自分について語らず、なぎなたが日本一だということもなんと、最後の授業の最後に明かしたんです!「和の所作」がスタートはそこからでしたよね。」
礼節と品格も身につく、これまでにないメソッド
富田剛史(以下、富)「近年は着物人気なども高まっているけれど、例えば正しい正座の仕方を習ったことがないという人も多いよね。なぎなた以外にも、華道や茶道など長年「和」に親しんで来た令歩さんにとっては自然にできる動作でも、実は当たり前ではない。これまでならば礼儀作法みたいに捉えられがちな「和の所作」をトレーニングとして学び、結果として美と健康はもちろん、礼節と品格も手に入れる…そんなメソッドを少しずつ形にしていきました。」
令「自分にとっては当たり前すぎて見えなかったこと。その価値を富田さんに見つけてもらった気がしました。」
富「日本人が昔から行ってきた美しい日常動作はトレーニングになる。さらに単なるトレーニングに留まらず長い時間をかけていくことで見えるものがある。茶道や華道といった「道」に通じるものがあるし、世界が求めるメソッドになるはず!と伝え続けたよね。ただ僕や洋子さんは確信を持っていたけど、肝心の令歩さん自身が長い間半信半疑だった(笑)」
令「はい(笑)みんな痩せたかったり痛いところを治したかったりしてレッスンにいらっしゃるのに、そんな深いことまで求めるのかなと…。それと私はやはりお客様の生身の体を見ないと指導ができないという思いが強くて、最初はオンラインレッスンに対しても抵抗がありました。」
洋「その話し合いを2時間以上…みたいなことを繰り返していましたよね~!『後ろ姿の1mmの違いなど、そういったところをきちんと確認したいのに画面越しに何がわかるの?相手だってわからないはず!』って。」
令「そうそう(笑)でもそんな中で新型コロナによる外出自粛になり、ママ大のオンライン企画などに携わるうちにイメージが変わりました。ただテレビを観るような一方的なものだと思っていましたが、本当に相手がすぐ目の前にいる様で思った以上にお互いしっかりコミュニケーションができる。世の中が一気にオンライン化した流れもあり実際にオンラインレッスンを開始すると、思いもよらなかった良さがあると気づきました。」
オンラインならではの価値とは
メディアに最適な伝え方を考えることの大切さ
佐 「今はカメラ3台を駆使してレッスンを行っていると伺いました。レッスン開始時や最後に流れる動画や音楽なども、わくわくした気持ちを高めてくれますよね。」
富「機材をどう使うかといったノウハウももちろん重要だけど、一番大切なのは『誰かに何かメッセージを伝える場合、言葉だけではなく、そのメディアで使えるあらゆる手段を使って伝え、感動させるべき』ということだと思います。これまでの対面がオンラインに変わったというのはつまり、『メッセージを伝えるメディアが変化した』ということ。映画が良い例だけど、音楽や映像などをはさみこむ、カメラで足元をアップで見せる…など、音や場面が変化することで人の気持ちが動くことがある。メディアが変わったら、そこに最適な伝え方を考えることや、それを叶える技術が必要になってくるんだよね。」
洋「オンラインはリアルの代替ではない。今まで対面でやっていたことをそのまま中継するだけでは駄目で、オンラインだからこその付加価値をつけなければならないというのは、メディア化コース(URL貼る)などママ大でずっと大切に伝えてきたことでもありますよね。
富「そして『和の所作』は『“日常こそがトレーニングである”といことを思い出させてくれる時間』で、そこに時代性も現れていると思う。例えばこれまでは『勉強や仕事』と『遊びなどオフの時間』をきっぱり分けて考えていたけれども、時代が大きく変化したことによって、それらがグラデーションになっていっている。在宅ワークなどもその一例だし、プライベートの中に充実した仕事のアイデアがある…など、これからますます従来の線引きがなくなっていくはず。そんな中だからこそ、和の所作の考え方に共感してくれる人は増えて行くんじゃないかな。」
令「ずっと昔から日本人が大切にしてきた姿勢や生き方みたいなものが、また見直されていくのかもしれませんね。」
対面レッスンでは気づけなかった、何気ない日常の動き
令「オンラインレッスンを行う上で、画面の中で美しく見える『見え方』を常に追求する大切さについて、富田さんから常々言われてきたのですが、最初はピンと来なかったんです。ただ、ある時お客様がレッスン中にヨガマットを何気なく足で引き寄せた動作を見た時にハッとして。例えばリアルで会っていると目に留まらないことも、オンラインの場合画面を注視していることによってすごく目立つんですよね。」
富「そう。例えば画面から見切れていないかなど含めて、自分が相手からどう見えるかを常に意識していなければいけないし、ずっと同じ構図や場面が続いていたら見ている相手は飽きるよね。」
令「その意識は相手の方への気配りであり、対話しようとする前向きな意志でもある。そしてその考えは『普段何気なく行っている動作を美しくすることで、体そのものや心まで美しくなる』という『和の所作』の根底にある想いに通じるとも感じました。」
佐 「当初は抵抗があったオンラインに挑戦したことで、ご自身のやりたいことへの理解がより一段と深まったというところが興味深いです。オンラインレッスンに対するお客様からの反応はいかがですか?」
令「移動や外出することなくご自宅から気軽に参加できるといったメリットはもちろんですが、対面のレッスンの時以上に、お客様自身が自分で変わろうとしよう、こちらの話を理解しようとする真剣さを感じます。レッスンの中でお話した筋肉のつき方などをご自身の体を見ながらひとつひとつ確認する、『この動きがやりつらいけれど、どこを意識すればより良くなるか』といった具体的な投げかけをしてくださるといった方が増えました。」
洋「画面越しだからこそお互い、相手の話を受け止めようとするアンテナが強く立っているのかもしれないですよね。」
令「はい。それと、たくさんの方のレッスンをする中で感じるのは、体が凝り固まっている方が本当に多いということ。それがほぐれたらより快適な人生が送れると思うので、オンラインの良さも活かしながら、ひとりでも多くの方の美しさや健康のお手伝いができたら嬉しいです。」
富「今これだけ人気が出ているのはまず、痩せるとか膝が痛くなくなるといったスペック的なところで効果が表れているからというの大きい。でも実は体の変化だけでなく内観でもあり非常に奥が深いメソッドで、やり続けることで気づきや自分を見つめることになる、まさに『道』だと思う。」
洋「今後は例えば『古来着物を着てきたから、日本人はこういう精神を持っている』といった、日本人ならではの哲学のようなものにも繋げていきたい。そのゴールを一緒に探しつつ、『和の所作』の魅力を共に追求しているところでもあります。」
このインタビュー&記事を書いたのは
佐々木はる菜さん(現役ママ大生、ライター)
株式会社リクルートを経て、結婚・出産を機にライターへ。現在は、月間PVが2000万を超える人気女性誌のwebサイト『LEEweb』でコラムを連載、主にママ世代に向け国内外のトレンド、商品・サービスや社会的な取り組みなどを幅広く執筆している。子育て中の視点を活かした取材によるリアルな体験記事が得意で、2人の子どもを連れて海外取材を行った経験も。その他、企業サイトのコンテンツ作成や起業家のインタビュー記事制作などに携わる。出産離職や海外転勤など自身の経験から、多様な生き方や女性のはたらき方、駐在妻についての情報発信も目指し、ママ起業家へのインタビューを続けている。